肌寒くなり庭の紅葉が待ち遠しいこの頃、一瞬で終わる熊本の秋を満喫したいです。今日は先月末に参加した地域のビッグイベントについて綴ります。ディレクター藤井です。
以前少しだけブログでもお話しましたが、益城町の津森神宮の「お法使(おほし)祭り」、神殿を持たないお法使さん(おほしさん)という神様が益城町・西原村・菊陽町の12地区を1年ごとにリレー形式で巡幸します。今年は私が暮らす地区が12年ぶりにお迎えする年で、それはそれは気合をいれてお祭り当日にむけてみんなで準備をしてきました。
私も家を建てて今の地域に越してくる前は全然知らなかったのですが、お法使祭りとは熊本県重要民俗文化財にも指定されている600年以上の歴史あるお祭りです。引き渡す側の地区は1年間地域を守ってくださったおほしさんに感謝の気持ちと名残惜しさを込めて御神輿を投げて転がして荒く扱い次の地区へ引き渡すのが伝統です。
10月末に向けて春からさまざまな話し合いを行い6月ごろから準備が本格始動しました。まずは私たち女性陣が6月から毎週1回公民館や広場に集まり、「道踊り」と言われる踊りの練習に励みました。何せ12年に1度なので、初参加の人もいますし経験者の方も12年前24年前の淡い記憶を辿りながら全員探り探り。しかし音楽が流れると体が勝手に動き出す大先輩方、さすがでした。
本番が近付いてくると子供たちの楽器の練習と同日の踊りの練習だったので、それはそれは盛り上がり毎週和やかな楽しい夜を過ごしました。子供たちにとっては暗い時間にお友達に会える特別感がテンションを上げていたようです。私もなかなかお会いする機会がなかった地域の方ともお近づきになれて楽しい時間だったなと感じます。先輩方のご指導のもと新参者の私もお法使音頭、菊陽音頭、河内男節の3曲をマスターさせて頂きました。
子供たちは道樂(みちがく)と言って楽器を演奏しながら歩きます。この道樂も600年以上前から耳で聞いて伝えられてきたものなので楽譜などはなし。もう子供さんが大学生になられている先輩お母さんのお力を借りて、12年前の子供たちが演奏した曲を聞き、楽譜に起こして、夏休みから小学生の子供たちも毎週笛、太鼓、じゃんがら(ミニシンバルのようなもの)を練習してきました。我が子は未就学児なので練習があまりいらない鈴を担当しました。
他にも当日の神輿の担ぎ手となる夫は、担ぎ手としてのマナーなどを事前に教えて頂いたり、お祭り当日に向けての除草作業や飾り付け、1年間ご神体を安置する御仮屋の建築、直前の日曜日には地区の皆さんで集まりリハーサルを行いました。
そしていよいよお法使祭り当日。
まずは地区の広場で出発式。ご来賓の方々のご挨拶があり女性陣の道踊り、子供たちの道樂を披露。その後御神輿の受け渡し場所へ移動しました。
受け渡し場所は農園を営まれている方の広大な畑を事前に整備して頂いていました。菊陽町らしいニンジン畑をバックに行うお祭り。天気にも恵まれて良いロケーションです。
ここで西原村からやってくるおほしさんを待ちます。西原村の男性陣が御神輿を担ぎ、女性の皆さんが踊りながら受け渡し場所へ入ってきます。西原村の子供たちによる道樂の披露が行われている中、名物の荒神輿。西原村は一度ドスンと御神輿を落として勢いよく転がしていくのが伝統とのこと。
娘2人を抱えながらだったため、遠くから伝統行事を見守りました。
そして無事に(?)壊れた御神輿を祭壇へあげて、受け渡し神事が行われました。我が地区の担ぎ手の男衆も集合。
ここからおほしさんを迎える地区の出番で、子供たちの道樂と女性陣の道踊りを披露し受け渡しが完了します。
受け渡しの際に6年ほど前に西原村でお引渡しをした担当のオーナー様ともお会いできました。お互いにお法使祭り初心者ですが、伝統を守っていきましょうと固く誓い、楽しいお喋りも出来ました。ご家族も増え地域で楽しく暮らされている様子を見られて、長くこの仕事をやってきて良かったなと改めて感じます。
受け渡しを無事に終えたら、ご神体を私たちの地区の御仮屋へお連れして遷座祭を行います。ここでも子供たちの出番。神事の最中に御仮屋周りを演奏しながらまわります。長い時間本当によく頑張った子供たちに大拍手です。
私たちの地区は1年間おほしさんに守ってもらいながら過ごします。公民館のお向かいに建つ御仮屋でご神体を安置していますので、毎朝どなたかがお参りをしている姿を見受けます。お祭り当日のみならず、日常に戻ってからも伝統を大切に過ごしている地域の方々の姿は温かくて素敵です。
来年は次の地区へ引き渡すために、また踊りや楽器の練習が予定されています。来年は今回出番の少なかった夫も神輿の担ぎ手として大忙しの予定です。
5年半前に縁もゆかりもない地区に「景色にひとめぼれした」という理由ひとつで越してきたことがきっかけで、この長く続く伝統行事に家族そろって関われる事はとても貴重なことだと感じています。この先12年、24年、36年と承継していくことも私たちの世代で頑張っていかねばなりません。子供も年々減っている地域ですが12年後中学生になった次女が興味を持って参加してくれれば良いなと思います。今回娘たち2人が着た小さな法被は12年前にご近所の子供さんが着たものを譲り受けました。大切に保管して、また12年後に地域の小さなお子さんに譲りたいなと思います。
今日は私の暮らす地区で行われた「お法使祭り」について綴りました。いろんな地域で受け継がれている伝統が様々あるかと思います。先人たちが守ってきたものを受け継ぐとも、この機会にいろんな年代のご近所の方々と触れ合えたことも、この数か月とても大切な時間でした。
来年のおほしさんを送り出す際のこともまたご報告出来ればと思います。次回もよろしくお願いします。
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